光学の専門的な話は物理の話なので苦手に感じるものですが、いくつか知っておくとよい数字があります。
その一つとして、
- 空気から光学ガラスに光が入射すると、4%の光を損失する
というものがあります。
例えば、凸レンズ一枚では2回、この損失が起きるので、
96%×96%=92.16%となり、約8%の光が失われるわけです。
普通の双眼鏡では、対物レンズと接眼レンズで合計5枚程度は使われており、10回この損失が発生するので、これを計算すると34%もの光が失われることになります。(実際は、これにプリズムが加わります)
せっかく対物レンズで光をたくさん集めても、かなりの割合が失われてしまっては、理論値から大きくかけ離れた見え方にしかならず、がっかりです。
昔の双眼鏡を見た時に感じる減光感は、主にここに原因があります。
この反射による光の損失を防ぐのが「コーティング」です。
レンズ表面に様々な化学物質の層を作ることで、光の透過率を上げます。
昼間の景色を見る場合だと、数%程度の違いは、普通の人では気がつきませんが、薄明・薄暮時や天体を見る時などは、最後の一押しがものを言う時があります。
また、高級なコーティングではすべての色がきれいに見ることができ、一度それに慣れると、なかなか戻れないこともあります。
進歩の遅い双眼鏡の世界ですが、コーティングの技術だけは、この数十年間の変化はすさまじく、最新・高価なものほどグレードが高いと思っていいと思います。