双眼鏡の販売をしていると、ときどき仕事で使用する人からの問い合わせを受けることがあります。
フォークリフトで品物のタグを確認したい、造成地の現場で誰が重機を運転しているかを確認したい、高架線の補修工事で使いたい等、用途はさまざまです。
趣味で見る双眼鏡と違って、人の命にかかわることもあるため真剣に回答しています。
今回のテーマは海や船舶で使用する双眼鏡の選び方です。主に、漁船などの海上監視に使用されることを想定して、どのようなポイントで選べばいいのかを説明します。
海や船舶では、業務で双眼鏡は使用されます。
私はこの分野は完全に素人なので、2008年に起こった海上自衛隊のイージス艦と漁船が衝突した事故がなぜ起きたのかまったくわかりませんでした。新聞によれば、最終的には目視による監視が甘かった、というのが主な理由だったようです。
つまり、どんなにレーダーが発達していても双眼鏡で確認することはとても大切なことであることが再確認させられた事故でした。
趣味の双眼鏡と異なり命に係わる業務に使用されるため、しっかりと役割を果たす双眼鏡であることが求められます。
暗い中でも船の航路に障害物がないかどうかを確かめなければいけないので、とにかく明るい双眼鏡であることが求められます。
そのため手持ちの双眼鏡の中では最もパワフルな7×50(ひとみ径7mm)が業務用には一般的です。
最近はコーティングの技術向上のおかげで、7×50よりも一回り小さい双眼鏡でも充分明るく見えるようになりました。
しかし、あらためて7×50で景色を見るとインパクトが違います。多少コーティングの仕様が古くても、圧倒的な光量でカバーしています。
・IF(独立繰出し)
海の監視に使用される双眼鏡は、一般的に販売されているCF(中央繰出し)式のピント合わせではなく、IF(独立繰出し)と呼ばれる左右別々にピントを合わせるタイプが採用されています。
監視においては無限遠以外の対象を見ることがほとんどなく、ピントの位置を頻繁に調節しなくて済むからです。
IF式は頑丈で精度を出しやすく、防水にも向いているため業務用で好まれます。
水上や荒れた天気の中でも双眼鏡を使用することを考えると、防水は必須の機能です。一般的に双眼鏡内に窒素ガスを充てんして防水仕様にするため、防水の機能は10年程度といわれています。
雨天の中で使用しなくても、結露にも強くなるため天体観測をする人も安心です(夜間に望遠鏡がびっしょりと濡れた経験のある人も多いはず)。
防水性能に関しては、カタログに表記されているので水深何メートルで何分まで浸かっても大丈夫なのか確認しておきましょう。
防水型の欠点は重くなることです。
私は経験がないのでわからないのですが、双眼鏡は水に落としたら浮くのでしょうか。
テレビでヘリコプターからの映像で渋滞の様子を映し出されることがあります。ヘリ自体は振動が激しいので、当然映像も揺れると思いきや、スタジオで撮影しているかのようにピタッと静止しています。
あれはカメラに防振機能が搭載されているからこそ可能な映像です。
同じように双眼鏡にも防振機能を備えたモデルが販売されています。
船上は常に揺れていますので、手ブレに加えてもうひとつのゆったりとした揺れが加わります。
そこで、防振機能(イメージ・スタビライザー)のある双眼鏡が活躍します。キヤノン、フジノン、ニコンなどから発売されています。
私が実際に見た感想ですが、フジノンの防振はゆったりとした揺れに強いのに対して、キヤノンは手ブレに強い印象です。
防振双眼鏡の欠点は、高価であることと重量が重いことです。また、電池を使用するため、寒冷地ではバッテリーの消耗が早いのが難点です。
7倍までの双眼鏡なら不要なので、防振が必要かどうかは用途を細かく考えてからにしたほうがいいです。
双眼鏡は趣味や楽しみで使われるだけでなく、業務の道具としても使われます。特に海上で使用される双眼鏡は、人命にかかわる業務に使用されるためいい加減な性能では役目を果たせません。
求められる性能としては、パワフルで明るい双眼鏡です(具体的には7×50)。基本的に無限遠にしかピントを合わせないので、IF式が向いています。
雨天でも使用したり水没するリスクもあることから、防水機能は必須です。防水機能は商品によってさまざまなので、あらかじめカタログなどで確認しておきましょう。
防振機能があれば、手ブレだけでなく船の揺れも補正するため、高倍率でも安定した像が得られます。用途によっては、このような双眼鏡が必要になることもあります。