窓ガラスを外から見ると、鏡のように景色が反射しているのが見えることがあります。あれは、外からの光が窓ガラスを通過するときに一部が通過せずに反射しているからです。
レンズやプリズムに使用されるガラスは非常に透明度が高いものですが、それでも光を100%通過させることはできません。
光線が空気中からガラス面に入射するときと、ガラスから空中に出るときに光の損失が起こります。
双眼鏡には対物レンズ・接眼レンズ・プリズムに多くのレンズが使用されているため、そのままでは最初に取り込んだ光の50%しか眼に届かないことになります。
この反射による光のロス(損失)を減らすために考案されたのが、コーティングです。レンズの表面に薄い化学物質の膜を作ることで、光の透過率を向上させます。
コーティングにはグレードがあり、光の透過率や色のバランスが異なってきます。
・モノコート(単層膜コート、シングルコート)
レンズの表面に1枚の膜だけのコーティングです。コーティングが無いときに比べれば段違いに透過率は向上しますが、特定の色以外は反射してしまうため色のバランスが崩れることがあります。
廉価版の双眼鏡に多用されます。
・マルチコート(多層膜コート)
レンズの表面に複数の膜があるコーティングです。一般的には3層のコーティングで、反射光が緑色に見えることが多いです。
近年、コーティングの高級化が進み5層や7層のコーティングも登場しました。
光の透過率の違いは普通の人には判別できませんが、色の再現や発色の良さで違いを感じます。
上の写真は上が安物双眼鏡(シルバー)と高級9層マルチコート(黒)の対物レンズにLEDライトを当てたものです。
光の透過率の違いは一目瞭然です。