1854年にイタリアのポロがプリズムによる双眼鏡の原理を考案しました。これが本格的な双眼鏡の始まりです。
プリズムによる光の全反射と呼ばれる現象を応用しています(全反射についてはこちらをクリック!)。
ポロプリズムの全反射を活用すると低コストで明るく鮮明な像を得ることが可能です。今でもポロの良さは双眼鏡愛好家の間でも広く知られています。
ポロ式の双眼鏡がどのような仕組みになっているかを説明します。
双眼鏡は精密な光学機器なため、素人が分解するとほぼ元に戻すことはできません。そのため、気楽に中身を確認することができず、多くの人にとっては双眼鏡の原理は謎のままです。
そこで、日の出光学様のご厚意で検品で不具合が見つかった双眼鏡を1台いただきましたので、これを分解してみることにしました。
ポロ式は大きく分けて普通のポロとミニポロの2種類があります。
ポロ式は大きく分けて普通のポロとミニポロの2種類があります。
普通のポロは対物レンズから取り込んだ光を内側に曲げて、接眼レンズに導きます。
ミニポロは対物レンズを内側に配置することにより、コンパクトに仕上がるようになっているのが特徴です。
眼幅の関係で、コンパクト双眼鏡にしか応用できません。
コンパクト双眼鏡の半分だけボディを取り外してみることにしました。細かなビスや接着剤が使用されているため、意外と苦戦しました。
左側だけカバーと接眼レンズを外した状態になりました。
対物レンズから入った光がどのように接眼レンズに導かれるのかを理解するために、レーザーポインターを使って撮影してみます。
双眼鏡の接眼部側から撮影すると次のようになっています。
対物レンズ側はこのようになっています。
ご覧のとおり、ポロプリズム式の双眼鏡にはプリズムが2個使用されています。
双眼鏡はケプラー式望遠鏡を応用したものですが、この望遠鏡は本来、上下逆さまの倒立像です。天体には上も下も関係ないので不都合ありません。
しかし、地上の景色を見ることが多い双眼鏡の場合、本来の姿である正立像にしなければなりません。
そこで2つのプリズムを使用して、上下反対+左右反対×2→上下反対の倒立像になるように工夫しています。
望遠鏡からの像が倒立なので、それを上下逆さまにすれば正立像が得られる、という仕組みです。
ずんぐりとした容姿が特徴のポロ双眼鏡の原理を見てきました。
プリズムの全反射によって光を折り返すことで、コンパクトになり正立像が見えるようになることが理解できたと思います。
全反射の力は絶大で、これこそがポロ双眼鏡の長所であるキビキビとした明るく鮮明な像を可能にしてくれています。
最近ではダハの台頭によりポロは重さゆえに敬遠されがちですが、この機会にもう一度長所を見直してみましょう。