双眼鏡は天体望遠鏡を応用してできたもので、原理は同じです。しかし、双眼鏡にしかない大きな特徴が2つあります。
ひとつめは、両目で見るので立体視できること。もうひとつは、正立像(上下左右がありのまま)で見られることです。
天体望遠鏡の像は本来、上下逆さまの倒立像です。
これをプリズムの全反射という原理を使って光を折り返した結果、正立像が得られるようになっています。
今回はプリズムの全反射と呼ばれる原理について学びましょう。
まずは、この写真をご覧ください。
真ん中に2匹の金魚が向かい合っているように見えますが、実は金魚は一匹しかいません。
これは全反射と呼ばれる現象により、鏡のように手前の金魚が反射してカメラにその姿を映し出しているのです。
プリズムはこの全反射の仕組みを最大限に活かして光を折り返す働きをします。
最も簡単に思いつくのは鏡の利用ですが、鏡の反射は光のロスや像が悪化するため、プリズムの全反射を利用するのが最適なのです。
双眼鏡は天体望遠鏡を応用したものであることはすでに述べました。
ケプラー式の望遠鏡は次のような仕組みになっています。
ケプラー式の望遠鏡をのぞくと、上下逆さまの倒立像になっています。
そこで、ポロプリズムを2個使ってこの倒立像を上下反対にします。そうすれば、正立像が目に届く、という仕組みです。
上の写真にあるプリズムは透明なガラスでできていますが、全反射の原理により前方から来た光はほとんど損失することなく、前方に折り返されています(像が上下反対になる)。
そして横向きのもうひとつのポロプリズムによって、もう一回光が折れ曲がって手前に出てきます(左右反転×2→正立像)。
このようなプリズムによる本格的な双眼鏡の原理は、1854年にイタリアのポロによって考案されました。
これを受けてツァイス社が1894年に8×20のプリズム双眼鏡を発売し、商業的に大成功したそうです。