ポロプリズムが技術者ポロの名にちなんで名づけられているのに対して、ダハは「屋根」を意味するドイツ語(dach)「ダッハ」から由来しています。英語では roof prismと呼ばれています。
この名が示す通り、プリズムの一部が屋根のような形をしているのが特徴です。
イラストで光路図を見るととても複雑な反射をしますが、ポロよりもコンパクトに双眼鏡を仕上げられるのが最大の長所です。
では、実際の双眼鏡を分解してダハプリズムについて説明します。
まず初めにダハ式双眼鏡の光路図を見てみましょう。
ダハプリズムにはいくつかの種類がありますが、最近の双眼鏡の多くは「シュミットペシャン」と呼ばれる2つのプリズムを組み合わせたタイプです。
絵でわかるとおり、光の通り道が一直線なのでボディをスリムに仕上げることができます。
では本物のダハ式双眼鏡を実際に分解してみましょう。
ポロプリズムでも同じ説明をしましたが、もう一度同じ内容を繰り返します。
双眼鏡はケプラー式という望遠鏡を応用したものです。ケプラー式の望遠鏡は、上下が逆さまに見える「倒立像」が見えるのが特徴です。
対物レンズを外して、ホワイトボードに書かれた「あ」という文字を見てみましょう。
双眼鏡は地上の景色を見るのに使われるため、倒立像では使いものになりません。そのため、この像を上下逆さまにして「正立像」になるようにしなければいけません。
その役割を果たすのが、ダハプリズムです。
シュミットペシャンでは2つのプリズムを組み合わせているため、このようなプリズムユニットと呼ばれるケースに収められています。
ではこれにレーザーを当ててみて、本当に光がまっすぐに出てくるかを確認しましょう。
話を元に戻しましょう。
対物レンズで倒立像になるものをプリズムで逆さまにすると、正立像が目に届く仕組みになっています。
ポロプリズムはすべて全反射と呼ばれる原理で光の方向を変えているので、像が悪化しないという長所がありました。
しかしダハプリズムの場合、まさに屋根の部分は全反射が得られないため、メッキを塗って鏡のように反射させなければいけません。そのため、光の反射率を高めるためにコストが非常に高くなります。
またダハプリズムの屋根の合わせ目(稜線)は極細に仕上げないと、反射しない部分が発生してしまいます。これは大変難易度が高くやっかいです。
また複雑に光が内部で反射するため、解像力やコントラストが低下します。これを補うためにフェイズコートというコーティングが必要になります。これも大変手間がかかり高コストの原因となります。
以上のことを総合すると、ダハの長所はコンパクトに仕上げられることの1点です。
コストをかければポロと同じような見え味の像を得られますが、それにはかなりのコストアップを覚悟しなければなりません。