初心者でも簡単! 正しい双眼鏡の選び方

正しい双眼鏡の選び方

まず、もしあなたが下記のいずれかを信じているなら、

ほんの数分で構わないので、続きを読んでください。

 

双眼鏡は「高倍率ほど高性能」である。

 

どうせ買うなら「ズーム式の方が便利」である。

 

赤外線から目を守る「真っ赤なコーティング」は、ちょっとミリタリーっぽくて、カッコいい。

 

「ピント調節不要・オートフォーカス・フリーフォーカス」は便利な機能だよね。

 

実は、これらすべて、絶対に選んではいけない双眼鏡なのです。

高倍率な双眼鏡が使い物にならない、その理由とは?

「遠くの物(人)を大きく見たいから双眼鏡を使うんでしょ? 倍率が高い方が、遠くの物がより大きく見えるんじゃないの?」

 

ハイ、それは事実です。

でも、問題はその「見え方」なのです。

 

双眼鏡(望遠鏡も同じ)の基本は、

 

対物レンズの口径(のぞく方と反対側についているレンズの直径)によって、

 

集光力(より多くの光を集める能力)や分解能(細かい物を見分ける能力)の限界が決定されるので、

 

むやみに倍率を高くしても意味がないのです。

 

では、無理に高倍率の双眼鏡を作るとどうなるか?

 

まず、論より証拠。下の写真をご覧ください。

ここに2台の双眼鏡があります。

hinode5×20-A1
hinode5×20-A1

これは、かつて双眼鏡倶楽部で取り扱っていた日の出光学5×20(倍率5倍、倍率固定式、一面マルチコート&モノコート)の双眼鏡です。

Super Star12×25
Super Star12×25

こちらは、親戚から拝借したsuper Starと書いてある12×25(高倍率、倍率固定式、赤外線カットのルビーコート)の双眼鏡です。

10年ほど前に近所のホームセンターで購入したそうです。

2つの双眼鏡のひとみ径比較

これは、双眼鏡を白っぽい壁に向けて、接眼レンズから30cmほど離れて撮った写真です。

 

レンズの真ん中に出来ている白い円が「ひとみ径」と呼ばれるものです。

 

「ひとみ径」は、口径(mm)÷倍率で求められます。

  • 日の出光学5×20-A1: 20÷5=4
  • Super Star 12×25: 25÷12=2.1

 

「ひとみ径」を二乗した数値が、カタログ上の「明るさ」です。つまり、この円が大きいほど明るく見えるのです。

 

日の出光学の双眼鏡は、明るさが16、対してSuper Starの方は明るさが4.4。

 

「低倍率である5倍の方が、4倍明るく見える」

 

ということです。

 

このように、高倍率の双眼鏡は、視野が暗くなり非常に見えにくくなってしまうのです。

 

さて、いよいよ実際にそれぞれの双眼鏡をのぞいてみましょう。

まずは、こちらの写真。

肉眼で見た自宅前の景色
肉眼で見た自宅前の景色

この道は、200メートル先で二股に分かれていて、その分かれ目のところには、2枚の交通標語の看板があります。

肉眼でも存在は確認できますが、標語の内容までは分かりません。(中央赤い円の中)

 

まず、日の出光学の5×20でのぞいてみましょう。

5×20mm双眼鏡の像
コリメート法にて撮影(クリックすると拡大)

松の木の下に、2枚の縦に細長い白の看板が見えています。

写真だと判りづらいのですが、「通学路につき」「とびだし」の文字がハッキリと読めます。

続いて、高倍率&赤いコーティング12倍25mmの双眼鏡です。

12倍25mmの双眼鏡の像
コリメート法にて撮影

「ハイハイ、ワザと失敗した写真を使用したんでしょ?」

 

とんでもありません。むしろ、逆です。

 

先ほどの日の出光学 5×21-A1の写真は、わずか2ショットで撮影終了。

 

一方、12倍の写真は、10枚撮影した中のベストショットなのです。

 

カメラが自動的に明るさを補正してしまうので、正確な比較は出来ませんが、実際にのぞいたイメージに近いです。

 

口径が5mm大きいにもかかわらず、像はボヤけ、白っぽくトンでしまい(コントラストが極端に低い)、視界が狭く、目標物を入れるのも至難の業です。

 

全体に青みがかった発色で、これは赤外線コート(赤いコーティング)による影響です。視野の下に映り込んでいる赤っぽいものは、私のシャツの色です。要は、光を反射している=光をロスしている、のです。

 

倍率が高いことの弊害は、もう一つあります。それは、

 

「手ぶれがひどくて、よく見えない。」

 

ということです。

 

どんなにしっかり握っていても、人間の手はわずかに揺れています。

低倍率では視界のブレ(揺れ)は、それほど気になりませんが、12倍となると三脚なしでは使用できません。

 

一部の広告に謳われている

「倍率100倍!」

など、ほとんど論外です。

 

説明が長くなりましたが、まとめますと

 

高倍率をウリにした双眼鏡は絶対に選んではいけません。」

手持ちの双眼鏡なら、10倍までが限界です。

(初心者は8倍までが使いやすいでしょう)

ズーム式は選んではいけない!

一見、倍率が自由に変えられて便利そうに感じますが、

ほとんど使い物になりません。

 

その昔、国内の一流メーカーが本気でズーム式双眼鏡を研究したことがあったそうですが、

「無理!」

という結論に達したようです(笑)。

 

ズームのためには、レンズの構成枚数を増やす必要があり、それは双眼鏡の設計上・製造上大きな足かせになり、まともな製品には到底ならないとのことです。

 

倍率は「固定式(倍率が変えられないもの)を選びましょう。」

赤外線をカットする真っ赤なレンズコーティングは、何の役にも立たない

最近は減少傾向にありますが、いまだにこの手の双眼鏡が販売されているのは残念です。

 

普通の双眼鏡のコーティングは、そもそも赤外線や紫外線を透過しません。

なぜなら、人間の目に感じない光を透過させてもしょうがない(または害がある)からです。

 

ですから、わざわざレンズに真っ赤なコーティングをすることは、視野が不自然に青っぽくなるだけで、何の益もないのです。

 

「ルビーコート」の双眼鏡は、絶対にやめましょう。

フリーフォーカス、オートフォーカス、ピント合わせ不要…、この言葉にだまされてはいけない!

ネット通販のサイトで双眼鏡のページがあったので、何気なく眺めているとこのような売り文句を見つけました。

 

「・・・しかもスポーツ観戦や観劇に使いやすいピント合わせ不要のフリーフォーカス6倍。」

 

いやあ、衝撃でしたね。

 

「えっ、何が?」

と思われた方は、これが何を意味するのかを理解していないのです。

 

私に言わせれば、

 

「・・・ピント調節機能は省いたから、普通の視力の人で左右ともに問題ない人でないと使えません。多少のピントは自分の目で調節してね。そうそう、最低でも30メートル以上、できれば無限遠に離れたものを見ないと使えませんよ。」

 

人間の視力は、ご存知のとおり人それぞれです。

また、同じ人でも左右の視力が異なることがほとんどです。

 

さらに、双眼鏡の役割は無限遠の物をみるだけでなく、10メートルほど離れたところにいる鳥を見るときや、美術館や博物館に展示されている数メートル離れたものを見るときにも使われます。

 

なのに、ピント調節の機能が無いなんて、使い物になりません。

 

おそらくコストを大幅に抑えられるので、このような仕様にして、さらに誤解を招くような

 

オートフォーカス(実際は目の方で調節させている)

フリーフォーカス(言い方を変えると、ピント調節不可)

 

というような表現をして、さらに開き直ってそれをウリにしている、という姿勢からして、まともな商品を期待することは無理な話です。

 

  • 普通の双眼鏡には、フォーカス調整機能はついています。
  • また、左右の視力差を調整するために、右側の接眼レンズに個別に調整するリングがついています。

 

では、よい双眼鏡をどうやって選ぶか?

1. 価格でふるいにかける。

私たちは日頃、接する機会が多ければ多いほど、相場というものが身についています。

 

例えば、喫茶店のコーヒーが1杯200円だったら、「安いかな」とか、1000円だったら「うわっ、高い」と判断してますよね。

 

でも、普通の人は双眼鏡を何台も買ったりしませんから、相場が分かっていません。

 

私の場合、

口径30mmのポロプリズムタイプの双眼鏡で、1万円程度の価格で、中国製だったら、もしかするとお買い得かも、と考えます。

 

同じ条件で、国産だったら、ちょっと安すぎるかな、と期待値が下がります。

 

同じ口径でもダハタイプだったら、中国産でも2万円位からでしょう。国産なら、2万円台後半かな。

 

双眼鏡はある程度までは、価格と性能が正比例しています。

 

「ある程度まで」というのは、せいぜい10万円程度でしょうか?

 

それを超える超高級品、例えば、ツァイス、ライカ、スワロフスキーでは、2倍〜3倍の価格で販売されているものがあります。

 

確かに見え味は感動的ですが、いくらなんでも10万円の双眼鏡の2倍〜3倍の性能があるわけじゃありません。

 

言い換えると、コストパフォーマンスが悪いのです。

 

反対に、安すぎる双眼鏡には注意が必要です。

 

  • 口径30mm新品価格が5千円未満で、まともな双眼鏡は無い。
  • 払った価格に対して、見合う価値(性能)があるかどうか。

 

この2つだけでも、頭に入れておいてください。

2. 双眼鏡を実際にチェックしてみる。

店頭などで選ぶ際は、次の項目をチェックしてみてください。

 

1)接眼レンズに出来るひとみ径をチェック!

双眼鏡を壁などの白っぽく明るいほうへ向けて、接眼部を30センチくらい離れて見ると、明るい円が見えます。この円が、きれいな丸い形をしていれば合格です。

ひとみ径の写真

2)レンズのコーティングと、鏡筒内部のつや消し塗装をチェック!

最近は、多層膜コーティング(マルチコーティング)がレンズに施されていて、光の損失を極限まで抑えています。

この「コーティング」がないと、光の一部が透過せず、どんどん暗くなっていきます。

 

蛍光灯などを対物レンズに反射させると、青緑色っぽい反射、赤紫や青など複雑な色、茶色っぽい複雑な色、など様々な種類があります。

 

荒っぽい言い方をすると、複雑な色をしたコーティングほど、高級なコーティングです。

 

50年前の双眼鏡。対物レンズの反射が多いのが分かります。
50年前の双眼鏡。対物レンズの反射が多いのが分かります。
中級クラスのコーティング。普通の使用ならこれで十分。
中級クラスのコーティング。普通に使うには、十分です。
高級なコーティング
高級なコーティング。複雑な反射光が特徴。色バランスが良い。

さらに対物レンズをのぞきこむと双眼鏡の良し悪しが分かります。

良い双眼鏡は、ほとんど光を反射せず、真っ暗な井戸をのぞきこんでいるような気になるほどです。

高級品では、内部の塗装も入念で、遮光環(しゃこうかん)と呼ばれる斜め方向から入る光をさえぎるリングが効果的に設置されています。

3)持ちやすさをチェック!

手持ちが前提の双眼鏡では、持ちやすさは絶対に譲れない条件です。

 

短時間では気にならない重量も、長時間使用しているとわずらわしく感じるものです。

 

手の大きさや指の長さは個人差がありますから、手になじむかどうか実際に確かめる必要があります。

 

 

4)可動部はすべて動かしてみる

可動部はすべて動かしましょう。

具体的には、ピント調整リング、目幅調整、視度調整リング、見口などです。

ガタつきがあったり、動かしにくさを感じたら、後々ストレスになるので交換したほうが賢明です。

同じ工場で作られた双眼鏡であっても、個体差は結構あるものですから、同じモデルでも別の個体を試してみるのも大切かもしれません。

3. すべてのチェック項目をトータルで考える。

すべての項目で、ハイスコアを出せれば、そりゃ良く見えます。

でも、予算には限りがある訳です。

 

私の経験ですと、

一つの項目だけでも目立って悪いと、他の良い点を台無しにしてしまうようです。

 

例えば、光学性能はいいけれど、重すぎる双眼鏡。

 

こういう双眼鏡は次第に持ち歩かなくなるので、意味ないです。

 

すべての項目が、合格点をクリアし、その中で自分が大切にしている項目が優れていれば、良い買い物をしたと言えるでしょう。

 

 

 

4. 使用目的を出来るだけ絞り込む。

何事にも当てはまることですが、

目的(見る対象物)が絞り込まれるほど、より満足度の高い双眼鏡を入手できます。

 

ここでは簡単なガイドを示します。

 

 

コンサート・観劇・携帯用

何よりも軽量でコンパクトであることが第一なので、当然、口径は小さめ(20-25mm)なものを選ぶことになります。

小口径で明るい映像を得るためには、倍率が低めの(5倍〜8倍)ものを選んでください。

重量は200g程度であれば、持ち運びにわずらわしさを感じることは少ないと思います。

 

このコンパクトクラスで問題なのは、低倍率で明るく見えるモデルがほとんどないことです。

 

 

コンパクト化の制限の中で、性能を追求するのが難しく、コンパクトクラスの双眼鏡はある意味「特殊」と言えるかもしれません。

 

→私のオススメはこれ!

汎用型・スタンダード

双眼鏡のスタンダードは、このクラスです。

ポピュラーなものとしては、8倍30mmですね。

 

野鳥の観察には、ある程度の倍率と口径が必要になります。

 

というより、倍率がある程度必要なので、明るく鮮明な映像を得るためにはある程度の口径が必要になる、ということです。

 

手になじみやすいこと、操作性が良いこと、なども大切な基準です。

 

屋外での使用が前提なので、防水・防滴機能がついていると、ある程度安心して使用できます。

 

→私のオススメはこれ!

星の観察用・ハンティング用

天体観測用は最も光学性能が求められる対象です。

なぜなら、恒星は理想的には点像でなければならず、レンズの収差が目立つからです。

また、星雲・星団は淡い光なので、明るい(口径が大きくて、ひとみ径の大きい)・コントラストの高い見え味が求められます。

 

天文用には、簡単に言えば、口径が大きいほど有利です。

 

ですから、ガイドブックなどを読むと、7×50の双眼鏡をすすめていることが多いです。

 

これは間違っていませんが、自分の年齢から最大のひとみ径を考えることも必要です。

具体的に言うと、

20代で約7mm、40歳で約6mm、50歳で約5mmまでしか、夜間の暗い場所でも瞳孔が開きません。

私の場合は42歳なので、6mm程度までしか瞳孔が開かないため、明るさの点からは7×42で充分ということになります。

 

ですから、

「何が何でも7×50がベスト!」

というのはやや偏った意見だと思われます。

 

ついでに申し上げますと、7倍50mmは重いです!

(ポロが好きな私でも、持ちやすさから、40mm以上はダハを選ぶことがほとんどです。)

 

星を見るなら手ぶれの関係で8倍まで、ハンティングやバードウォッチングなら10倍までが無難です。

 

→私のオススメはこれ!

5. カタログのスペック表(性能表)は理論値であって、実測値ではない!

パソコンなどの性能表で、CPUの性能が○○と書いてあれば、ほぼ信じていいと思います。

嘘だったら、メーカーの信用はがた落ちです。

 

ところが、双眼鏡や望遠鏡のカタログに表記されている性能は、計算上の理論値であることがほとんどです。

 

不思議ですね! そして、実際の見え方が大きく劣っていても誰も文句は言わない…、不思議すぎます!

 

たとえば、30ミリ6倍の双眼鏡が2台あるとします。両方ともスペック表には、「ひとみ径:5ミリ」「明るさ:25」と表記されます。

でも、片方は 対物レンズに単層のコーティングがあるだけ。もう一方は、フルマルチコートが施してあります。光の透過率が明らかに違うので、明るさが同じ訳がないのです。

 

もっと言ってしまうと、

「理論値通りの性能が出せている双眼鏡はありません。よい双眼鏡とは、理論値に極めて近い性能が出せているもの。」

 

ということです。

 

スペック表を見ただけでは、実際の見え方はよく分かりませんので、注意が必要ということです。